50代になり、私たち夫婦は
「また今度」
という言葉を、夫婦の辞書からはずしました。
すると不思議なことに、
お財布を開く場所が少しずつ
変わってきたのです。
私たち夫婦は長い間、
「子育てが終わったら行こうね」
「老後になったらやろうね」
「また今度」
という言葉をよく使ってきました。
でも最近、二人で真剣に話したことがあります。
もう「また今度」をなるべく使うのはやめよう、と。
以前なら、テレビで美しい景色を見たときも、
「また行ってみたいね」
だったのが、
「じゃあいつ行く?」
に変わりました。
たったそれだけのことなのですが、
お金の使い方までそこから変わってきたのです。
そのきっかけをたどると、
私は50歳のときの
「ある旅行」
をいつも思い出します。
それは、コロナが明けた頃、
大学生だった一人娘が、
「初めての海外旅行は、お母さんと二人で行きたいな」
と言ってくれ、
人生で初めて
娘と二人きりでイギリスへ行きました。
ピーターラビットの世界のような、
郊外の小さな村を二人で歩いていたときのことです。
ふと、心の奥底から
想定外の感情が湧き上がってきたのです。
それは
「この子と、この景色を眺めるのは、この人生で、もうこれが最後なのだ」
それはこれまで一度も感じたことのない、”さびしさ”でした。
また来れるよね。
いつかもう一度。
それまで私は、
どこかでそんなふうに思っていたのだと思います。
でも、
今の年齢の私と、
今の年齢の娘が、
この場所を一緒に歩いている時間は、
もう二度と戻ってこない。
そう気づいた瞬間、
旅のすべての場面が違って見え始めました。
スマホをポケットにしまい、
この景色と、
隣を歩く娘の姿を、
自分の目に焼き付けておきたいと思ったのです。
もちろん、その旅行にはお金がかかりました。
でもあのとき初めて私は、
「ああ、この瞬間にお金を使えてよかった」
と、心から思いました。
今という時間は、あとから買い戻せない。
それから少しずつ、
私たちのお財布を開く場所が変わりました。
旅や思い出だけではありません。
洋服も、
流行っているとか、
かっこよく見えるとか、
そういうことより、
肌に触れたときに気持ちがいいこと。
動きやすいこと。
着ている自分がご機嫌でいられること。
パジャマやシーツ、寝具、
体をケアするものに、
以前よりお金を使うようになりました。
誰かから見て素敵なものより、
自分の心が少し軽くなるもの。
例えば、
夜、布団に入って、
柔らかいガーゼの枕カバーが頬に当たった瞬間、
「あー、気持ちいい~」
そう思うだけで、ふっと
ハッピー度が一段上がるんです。
まさに
肌から入るご機嫌スイッチ(笑)
若いころの私は、
「人からどう見えるか」を整えることにお金をかけていました。
でも50を過ぎた今の私は、
「自分がどう感じるか」
を整えるものにお金を使うようになってきました。
見せるためのおしゃれから、
自分をいたわるための肌ざわりへ。
何でもない一日を心地よくするために、
お金を使っていくことの大切さに気づきました。
だから
以前より買わなくなったものもあります。
見栄えや流行だけを意識したファッション。
かっこよさだけを追うアイテム。
お財布の口を
開く「場所を選ぶ」ようになった。
そんな感じでしょうか。
50代になり、
これからどれだけ使って、
どれだけ残すのか。
その正解は、
きっと人それぞれです。
でも私は今、
「いつか」のためだけに残すのではなく、
今しかできないこと。
今だからできること。
そして、今この瞬間を少し心地よくしてくれるもの。
あのイギリスの小さな村で、
娘の隣を歩きながら感じた、
あの胸の痛みにも似た愛おしさ。
あんな瞬間は、
「また今度」ではもう手に入らない。
そこに
お財布を開いていきたい、
そう思っています。



めちゃくちゃ共感しながら読みました‥!わたしも経験することにお金を投じてます🙂↕️そうすると、気持ちよくお金を使うから、消費行動じゃなくて自己投資になっていきますよね☺️💞
今しかできない経験、時間の共有。お金の使い方もですが、時間の使い方についてもっと妻と話したいなってなりました。